「ルポ 青年期の発達障害とどう向き合うのか」

佐藤 幹夫
PHP研究所
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書店でふと惹かれて購入したこの本。
自分が今、広汎性発達障害の診断を受けている関係で、とても気になったという背景があります。
(方向性としては「陰性」で結論がでそうですが、スペクトラムと言う考え方の中で「しきい値」に達しないという程度の解釈です。
まあ、これはこれで非常に辛い(=単なる我侭で迷惑な奴になる)のですが……)

さて、ちょっとこの本には一カ所引っかかりを覚えました。
その引っかかり自体は、本の善し悪しにはあまり影響しない部分なのですが、
「そもそも発達障害とはなんぞや?」という部分。
基本的には「先天的な脳の機能障害で生育に関する物ではない」というのが通説。
この筆者の場合は、それよりも後天的な要素の方が大きいと言う風に見られました。
(認知におけるトラウマの蓄積で、認知が歪むといった感じ)

本当にそうでしょうか?
これは、相対性理論にもあることなのですが、現象は観測者によって違う見え方をしても良いのです。
つまり、健常の人も、発達障害の人も、同じインプットに対しての認知は全員が全員違っていて良いのです。
全員が全員違っているけど、発達障害の人が困り感を持つのは何故?ということに尽きると思います。

まだまだ脳は未知の部分が多く、発達障害との関連性も完全に分かっているわけではありません。
それでも、障害そのものの定義で言えば、ICFモデルで言うところの、環境要因による部分が大きいのではないでしょうか?
先天的に脳に障害があったとしても、その後の発育課程で適切なケアを行うことで、青年期の困り感を大きく減らすことができるのではないでしょうか?

たまたま今読んでいる別の本に、「メタ認知」という言葉がありました。
メタ認知とは、自分の認知を認知するということですが、自分はこれが全く出来ません。
発育課程での適切なケアの中にはこのメタ認知があると思います。
健常者とかそういう問題ではなくて、「自分を知る」ことが大切なのだと思います。

こうしたケアの中で、この本で印象的だったのは、とにかく人と人との繋がりのなかで支援をして行くということでした。
発達障害者自身が自己選択的に、そして、必要な時に支援を受ける。
そして、その支援を受け入れて(自分が出来なかったこと)、自己分析が出来ていること。
また、このケアが十分でなかった例として、発達障害者による犯罪も取り上げられています。

この発達障害者の犯罪の難しさとして、「認知の歪み」があります。
そもそも論で、何故人殺しはは罪なのかという所に行き着きます。
人を殺しても良いんです。ただ、殺したら罰がありますよ。それでもあなたは罪を犯しますか?ということです。
認知の歪みが有ると、こうした選択肢のインプットがそもそも間違っている可能性がある。
心神喪失の人が罰せられないのは、この選択する能力が無いからであって、これって発達障害者の犯罪と似てないですか?

こうした障害に対する理解、そして、支援はまだ十分とは言えません。
この障害を正しく理解すれば、社会資源を消費する人から、社会参加出来る人に変わって行くと思います。
その為には支援する人の人数が必要なのかなと思いました。

2012年3月29日 kaneyan 読書 5 Comments

5 Comments

  1. K

    6月 20, 2012

    1. 無題
    発達障害…。私も気になっていたとこです。幼児の場合は早くに訓練など受けて、社会に適応できるようになることが多いですが、私たちの小さい時はそんな診断ありませんでしたよね。大人になって、訓練うけれる場所ってあるんですかね??なんかいい方法ないかなぁ~…

  2. カネヤン

    6月 23, 2012

    2. Re:無題
    >Kさん
    「訓練」という言葉には少し語弊があるかもしれません。出来ないことを無理にやらせても効果はありません。出来ることと出来ないことに凸凹があるのは仕方ないことですから……。
    大切なのは、その子どもが、他の子どもと同じように自己肯定感を持ちながら、社会との関わりの中で成長して行くことだと思います。

    確かに、自分たちが子どもの頃にはそんな概念すら有りませんでした。養護学校(現支援学校)が法制化されたのが1985年、私が生まれるわずか1年前。妹たちが特殊(支援)学級に入れたこと自体が奇跡だと思いました。法制化から10年後のことです。専門の先生すら少なかった時代なのに。その当時は、知的や病弱や肢体不自由、視覚、聴覚が限度でした。
    今では支援学級も多岐に渡り、知的、情緒、病弱、肢体不自由まで、様々な障害を持った子どもが普通の学校に通える時代になりました。友達と一緒に育つことは、本人だけでなく、周りの子どもたちにも大きな影響があると思います。

    話が脱線しましたが、大人になってからの支援をしているところには、富山県では「発達障害者支援センターありそ」さんがあります。こちらは発達障害全般を支援の対象にしていますが、診断名は必要ではないようです。
    また、8月10日、11日と、「いいとこさがし」という企画があります。これは、コミュニケーションが苦手と言う方に向けての企画になっています。ワークショップを通じて、コミュニケーション能力の向上を目標としています。
    私もスタッフとして参加する予定なので、必要でしたらご紹介します。

    また、それに限らず、自分の得意なこと、苦手なことを知るのは大切だと思います。発達障害者の中には「視覚」と「聴覚」のバランスの悪い人がいます。(自分もそうです。「聴覚」が良すぎるのです)その結果、「同時処理」と「順次処理」と、得意な処理方法が変わります。自分は順次処理が得意なので、仕事なども「順次処理」が出来るようにマネジメントしていますし、同時処理能力が要求される車の「運転」は好きにはなれません。数学分野でも、方程式は得意ですが、幾何学は苦手ですね。
    http://ameblo.jp/kaneyan-kigyo/

  3. K

    6月 23, 2012

    3. Re:Re:無題
    >カネヤンさん
    教えていただいてありがとうございます。
    カネやんさんがすごいです。妹のこと、自分のこと、すべて受け入れられているからです。
    自分はここで言えないこと沢山あるのですが、いつかお話したいものです。
    話したら私の気持ちや考えもちょっとは変わるのかなぁと思ったり…。

    すいません、ありがとうございました!

  4. カネヤン

    6月 23, 2012

    4. Re:Re:Re:無題
    >Kさん
    自分は今、障がい児・者の「きょうだい会」を富山で主宰しています。そこでは「きょうだい」あるあるなど、「きょうだい」にしかわからない話で盛り上がっていますし、色々な人との出会いが自分を変えてくれたことも事実です。
    時期が来たら、遠慮なく言ってください。基本的に暇人ですから(笑)
    http://ameblo.jp/kaneyan-kigyo/

  5. K

    6月 23, 2012

    5. Re:Re:Re:Re:無題
    >カネヤンさん
    かねやんさん、さすがに勘がいい!!ちょっと確信ついててびっくりしましたよ(笑)多分私が誰なのかもわかっていると思います。ありがとう、やんわり教えてくれて。そして、伏せててくれてありがとう。
    また現れるから、そのときはまたよろしくお願いします。

    ではまた…。

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